興味がある漢方薬を学んでいます
今回は『当帰湯』です
漢方にご興味がある方のご参考になればと思います
漢方を学ぶ㊴温裏きょ寒剤/当帰湯ってどんな調合?
当帰をメインとした処方
冷え性で虚証のある人の腹痛、腹部膨満感を伴う疾患の治療をする調合
※大建中湯は虚寒による腹痛 + 実寒による腹痛に効く
当帰湯が治療する証は?
1)寒疑(かんぎょう)の証
寒疑(かんぎょう)とは?
体内に侵入してきた寒邪が気血を凝滞させて
痛み、冷え、血行不良などを生じさせる状態のこと
寒邪とは?
病因のひとつ
自然界の寒冷が引き起こす現象に似た症状が表れる病邪のこと
寒邪には虚寒と実寒がある
虚寒と実寒とは?
寒邪の一種
虚寒
長期の体調不良、生活習慣、環境の影響で
人体の機能が弱まったために
陽気が衰え相対的に寒邪の勢いが強くなる状態
実寒
寒い環境、冷たい飲食物、細菌、ウイルスの感染などの影響で
勢いの強い寒邪が人体を侵す状態
どんな症状がでる?
・固定性の激しい痛み、痙攣(ひきつり)
・薄い分泌物、排泄物(薄い鼻水・痰、軟便、下痢、頻尿、尿量過多、おりもの)
・寒がり
・悪寒、発熱
・腹部膨満感
・嘔吐
2)気血両虚の証
気と血の両方が不足している体質や状態
気:人体の構成成分のひとつ、生命エネルギーとされる
気虚:気が不足した状態
気虚の状態とは?
・疲れやすい
・元気がない
・無気力
・食欲不振
・声に力がない
・口数が少ない
・息切れ
・かぜをひきやすい
・動きたがらない
・多汗
血:全身を滋養する作用、その物質的基礎
血虚:滋養作用が弱い体質
血虚の状態とは?
・顔色がよくない
・皮膚に艶がない
・唇があれる
・爪がもろくなる
・目がかすむ
・頭がぼうとする
・ふらつく
・動悸
・四肢のしびれ
・筋肉のひきつり、けいれん
※当帰湯が有効なのは
ベース「気血両虚」という衰えた体質(虚証)
+
寒冷刺激(実寒)
=痛みが生じるケースに有効
舌:淡白色、白い舌苔の付着あり
どんな調合?
計10種の生薬
君薬:
1,当帰
血虚証に対して血を補って、滋養する
血の流れを改善
経脈に滞る血を温め、脈内の通りをよくし、止痛する
臣薬:
2,芍薬(白芍を使用)
血を補って、滋養する
肝の機能を正常化し、気血の流れを調整する
筋肉の緊張、こわばり、痙攣の改善
血流をよくする
3,人参
消化吸収機能をたかめ、気をおぎなう
肺と心の気を補う
けいれん性の痛みの緩和
吐き気、嘔吐をおさえる
胃の津液を補って口渇を改善
4,黄耆
衛気を強化して体表を固める
脾の気を補う
肺の気を補う
佐薬:
5,しゅく椒/しゅくしょう(花椒/かしょう、川椒/せんしょう)
辛熱製
脾、胃を温める
寒邪を散らす
上逆した気を下げ、つかえ、閉塞を改善
蠕動運動の改善
痙攣をとめ、ガスをめぐらせる
消化不良
胃内停水
腹痛
嘔吐
下痢
駆虫作用
6,乾姜
辛熱性
裏寒の除去で体を温める
寒邪をちらして痛みを和らげる
気の上逆をおろして嘔吐をとめる
7,肉桂
血液循環を促進する
腎の陽の不足を補って、人体を温める
止痛作用あり
8,半夏
蠕動運動促進する
平滑筋の緊張を緩める
ガスの停滞を除く
胃を健康にする
9,厚朴
蠕動運動促進する
平滑筋の緊張を緩める
ガスの停滞を除く
胃を健康にする
使薬:
10,甘草(炙甘草を使用)
脾、胃の機能を調整
諸薬の薬性の調和、毒性を緩和する
痙攣を緩和し、止痛する
どんな人に調合する?
ケース1)
お腹が痛む
普段は軽い痛みだが、ときどき強く刺すように痛む
お腹の張りがあり、冷えると腹痛とともに悪化する
お腹がぐるぐる音をたてて鳴ることがある
検査に異常はなし
疲れやすく、軟便気味
証:寒擬、気血両虚
服用3週後には痛みがだいぶ軽減
2ヶ月後には痛みが完全にひいた
お腹の音もなくなった
ケース2)
肋間神経痛である
疲れたときに特に痛む
脇腹から心臓のあたりに突き上げる痛みあり
寒がりで、手足が冷たい
証:寒擬、気血両虚
服用1ヶ月後、痛みがかなり緩和された
体の調子がよくなり、かぜをひきにくくなったと喜ばれたケースあり
さいごに
今回は、『当帰湯』を学びました
次回は、『安中散』を学んでいきます
ではまた!
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